まだ寒かった頃に、竹紙の注文を受けました。
1m×2mの大判竹紙を5枚、大仕事です。
「ライブペインティングに使います」とおっしゃられるので、紙の厚みや繊維の質感など、依頼者とご相談を重ね、実際の竹紙は今竹生さんに漉いてもらいました。
暑さを感じる頃に竹紙は出来上がり、今日がそのイベント日でした。
宮沢賢治と草野心平の詩の朗読にライブ音楽とコンテンポラリーダンスがあり、そこでライブペインティングがおこなわれるとお聞きしたのですが、それ以上の予備知識はなく、出演者も知らず、どんなライブなのか想像もつかないまま、それでもやっぱり実物を見なくちゃと、会場に出かけたのでした。
竹紙はどんなふうに使われるんだろう?
ペインティング中に絵の具の水分で、紙が破れたりしないだろうか?
染み込み具合や描き具合も他の和紙とは異なるから、絵描きさんはイメージ通りにうまく描けるだろうか?
あれやこれや心配で、ドキドキしてしまいました。
5枚の竹紙はつなげられていて、最初は大きな障子紙みたいに見えました。
でも、裏からライトが当たると、繊維が浮かび上がって、紙の表情は豹変します。
その前で、音楽演奏と二人の役者さんの朗読、コンテンポラリーダンス、そして、ライブペインティングが行われていくのです。
時に表からも描かれましたが、多くは裏から描かれています。絵描きさんは影絵のようにシルエットが浮かび、その中に色と絵柄が浮かび上がっていきます。
さまざまな民族楽器をひとりで駆使されていた音楽演奏、草野心平と宮沢賢治を朗読という形で演じていたお二人の役者さん、何の音もたてずに、時に激しく、時にコミカルに、時に悲しく踊り続けたコンテンポラリーダンス、そしてそれらの進行と呼応するように90分をかけて描かれていったライブペインティング!
終わりの一つ前の詩は、とても美しくて命に満ちていてなんだか悲しくて、私にはまるで高村光太郎と智恵子の恋愛詩みたいだなあと思って聞いていたのだけれど、それは草野心平がモリアオガエルの産卵を詠った詩でした(そういえば草野心平といえばカエルでしたっけね)。
その詩が終わった時、絵はほぼクライマックスに達していて、私、なんだか思わず涙が込み上げそうになって慌てました。
こんな舞台の大切なシーンの一端を担えて幸せなことだったなあ。
「二人のソラに詠む」ケンジの宙と シンペイの天
ライブペインティング 平野早依子
音楽演奏 Akira∞Ikeda
コンテンポラリーダンス 古川アキコ
朗読 草壁豊 七井悠
企画 沼沢忠吉(アートスペース寄す処)