実を言えば、私は寛太郎さんのご生前にお目にかかったことがありません。
数年前からデボラさんと寛太郎さんのことはお聞きする機会があり、お目にかかりたいなと思っていたのですが、機会を逸するうちに、寛太郎さんはご病気で亡くなられてしまいました。
その後、デボラさんが落ち着かれてからお目にかかることとなり、デボラさんやご友人たちから寛太郎さんのことをいろいろお聞きし、また、作品を拝見しながら、寛太郎さんに出会うことになりました。
伝統的な友禅技法を学ばれ、お仕事としてもされていたけれど、そこに収まりきらずに、自由に絵を描くようにして、布に、友禅の技法で、自分の好きな世界を描いていらしたこと。旅を愛して、様々な国に行かれ、そこでみて感動したものを描いていかれる自由な方であったこと。
龍と鳥を描かせたらピカイチで、独特の世界をお持ちだったこと。
多くのご友人に囲まれ、あたたかく、ユーモアあふれる人柄だったこと。
ボブ・ディランをこよなく愛していたこと。
作品からその人を知るというのも悪くはありません。その人の持っていた世界観を、作品を通して知る楽しみを味わいつつ、この展覧会を進めています。