月別アーカイブ: 2023年5月

6月の展覧会 かつみゆきお木の仕事

6月17日〜25日、かつみゆきおさんが清滝テラにやってきます!

現在83歳ながら、今なお新作を作り続け、自らトラックを運転して、北へ南へと駆け巡る驚異の木工職人です(ご自身のことを「作家」と言ってくれるな、俺は「職人」だ、とおっしゃいます)。

無垢の自然木、曲がっていたり、穴や亀裂が入っている木も厭わず、木と向き合い、その木の特徴を生かしてつくるテーブルや椅子、食器棚や家具、仏壇など、かつみさんご自身の生き方を映し出すような「木の仕事」の数々を展示販売いたします。

若き日にカラコルムの岩壁登山に挑み続け、「ピンチはチャンス」と笑って言える明るさと肝の太さ、それでいて、さまざまな経験を乗り越えてきたからこその、人の気持ちへの優しさが、皆を惹きつけ、励ますのだと思います。

会期中、かつみゆきおさんはずっと在廊、清滝に滞在します。
作品はもちろんのこと、かつみさんとのお話を楽しみに来る人も、いつも絶えることがありません。

会場には、家具類を作る端材から生まれる、さまざまな広葉樹の額類や、自ら漆を塗った皿、椀類などの木の小物もありますよ。
お越しをお待ちしています!

かつみさんは、実はなかなかの読書家で、パソコンにいつも日記(本人がおっしゃるには「メモ」)をつけておられます。その文章がとても魅力的なのです。
すでにご自身の文章と写真をまとめた本も出されていますが、今回も近年のメモをまとめた冊子を製作中です。展覧会に間に合ったらいいなと思っていますが、仕上がりまで間に合うかどうか、なかなか切羽詰まった情勢にあります、、、が、もし間に合えば、ぜひ併せてご覧いただきたいものです。

かつみゆきお木の仕事
会期 2023年6月17日(土)〜25日(日)
時間 11:00〜17:00(会期中無休)
会場 清滝ギャラリーテラ(京都市右京区嵯峨清滝町11−2)

一畳百色展終了しました

甲谷さんと由良部さんの「一畳百色展」が終了しました。
バリアフリーでもない山裾の古民家に、たくさんの方がお越しくださいました。展覧会のことをまとめて報告しようと思うのですが、会期中の多くの光景や思いが押し寄せてきて、なんだか簡単にまとめられません。

特に会期後半には、甲谷さんはじめ、重度障害者の方々が4組も車椅子で来てくださり、会場で皆さんと集うことができました。
会場で甲谷さんに久々に会われた看護師さんが声をかけられた時、甲谷さんの目がパッと輝いた瞬間は忘れられません。車椅子の方が、2階の作品も見たいと言ってくださり、皆で2階の作品を下に持って降りたことも印象深いことでした。ここまで来る時間や労力も大変だったはずなのに、会場を楽しんでくださったご家族の前向きさにも打たれました。帰り際には、ALSのご家族の方同士がライン交換し合う場面も見られて嬉しかったです。

場や状況がきちんと整っていなくとも、それ無理でしょ、できないでしょ、と決めつけず、できる形を探せば良いのだ、と気付かされました。

この企画展をきっかけに、いろいろな人がつながりあい、理解、協力し合い、明るく、風通し良く、少しでもより良く生きてゆけたらと願います。
この展覧会に来て、甲谷さんの絵と由良部さんの踊りを見て、話も聞いてくれた友人が、感想に「なんだかエネルギー温泉に入ったみたい」と言ってくれました。上手いこと言うなあ!まさに今、そんな感じです!

5月21日

「一畳百色」展終了。最終日、満員御礼。
どんな会だったのか、言葉にまとめようと思うのだけれど、うまく言葉が紡げない。言葉にすると、薄っぺらくなってしまいそうな気がして、あれ、意外にも無口になる。
大勢の方が来てくださった。この日も車椅子は2台。こんな山裾のバリアフリーでもない古民家の空間に、よくぞお越しくださった。

今回やりたかったことは、「五月晴れの新緑美しい清滝で、窓を開け放ち、吹き渡る風を感じながら、甲谷さんの絵をみて、由良部さんに踊ってもらうこと」。お二人を通して、一畳の空間の中にある大きな広がりを多くの人とともに感じること。そして、改めて、生きるとはどういうことなのか、考えてみたいと思った。

今、曲がりなりにも、それらができたという充実感の中にある(行き届かない点も多々あったとは思いますが)。


この展覧会を通して、とてもよくわかったことがある。
人はみな、それぞれ存在の意味を持っている。
病の有無も関係ないし、体が自由に動かせるかどうか、ましてや職業や頭の良し悪しも関係ない。
それぞれがその存在を発する手段は、言葉だけではなく、絵だったり、踊りだったり、歌だったり、いやそれだけでもなく、ほんの少しの表情だったり目の輝きだったり、いやそれですらなく、その人の存在自体が、誰かを励ましたり、助けたり、生きる支えになったりしている。
人はだれもが自由であるし、不自由でもある。
でも人は、誰もがそれぞれの光を放っていて、それは誰にも取り替えの効かないないかけがえのないものだと思う。

ああ、言葉にする尻から大切なものがするする抜け落ちていってしまう気もしますが、今回の展覧会で知りたいと思っていた答え、そんな言葉の近くにある気がしています。

 

5月20日

今日は胸が熱くなる1日でした。
清滝テラの会場に甲谷さんが来てくれました。


ギャラリーの壁面には甲谷さんの絵が並び、絵に取り囲まれた中に甲谷さんがいて、お知り合いのALSの方もいらして、車椅子は2台。来訪者の方々も見守ります。
その中で、一畳の畳を結界として、由良部さんが踊り続けられました。


静かだけれど激しくて、穏やかなようでいて研ぎ澄まされていて。
吹き抜ける風のようでもあり、とどまることなく流れてゆく水のようでもあり。
ああ、私はこの光景を思い描いて、この展覧会を企画してきたんだなあ!


由良部さんに、甲谷さんに、ともに居合わせてこの場を作ってくださった全ての方に、たくさんのたくさんの感謝の気持ちです。

ちなみに今日の甲谷さんは、朝からお出かけとわかって?ウキウキ?そわそわ?していらしたとのこと。
そして、会場で、以前甲谷さんの看護をしていらしたという、看護師の女性と久々の再会された時のこと、「甲谷さん、〇〇です、お久しぶりです!」と声をかけられると、甲谷さん、明らかに目が輝き、生き生きとした表情になりました。
な〜んだ、甲谷さん、みんなちゃんとわかっているんじゃん!
コミニュケーション手段がないなんてこと、ないんだね。
いろんな形で発信している!私、確信しましたね。
なんか、(もうちょっと)ちゃんと生きなあかんなと思いました。

舞踏始まりました

由良部正美さんの舞踏が始まりました。

5月16日。私、固唾を飲んで見守ります。
11時、畳の上に大の字で横たわる由良部さん。
気づかぬうちにいつの間にか、起き上がっています。
音もなく、ゆるやかに動き出し、風のようにうねり、またいつの間にか横たわっています。
見ていたはずなのに、いつの間にかそれが始まり、終わっているのです。

15分がとても長く思えます。

会場には、甲谷さんの日記を由良部さんが朗読した録音や、現在の甲谷さんの生活音も流れ、外では川の音や車の音もします。でも「静謐」という言葉がふさわしいように、すごく静かです。

なんだか体はそこに横たわっているけれど、魂だけがそこを抜け出て、起き上がり、動いているように思えます。

5月17日。輝くようなお天気の朝。
今日も畳一畳の上で大の字から始まります。
朗読は2005年2月から。

甲谷さんが会場の絵を描き、日記をつけていたのは2005年。
それを読んでいる由良部さんの声は2023年、その背景に混じり込んでいる音も、2023年の甲谷さんの生活の音です。
2005年と2023年が入り混じり、そこに、2023年5月17日の清滝の川の音や人や車の音がさらに加わり、不思議な時間と空間の多重構造になっています。

時間と空間は独特の歪みを見せ、ある時は時が止まったかと思えば、ある時は突然進んでしまうような気がします。

明日18日は展示のみ。5月19日、20日、21日には、展示と舞踏の両方がご覧いただけます。
静かにじっくりと展示と舞踏をご覧いただくなら、早めの時間帯がおすすめ、舞踏とその後のギャラリートークも参加される場合は、午後にどうぞ。
展示は11時〜17時、舞踏は11時〜15時、ギャラリートークは15時20分ごろからの予定です。

始まりました!

展覧会、始まりました!

土、日は、あいにくの雨模様のようです。
もちろん、五月晴れの清滝は気持ち良いですが、山間で霧にけぶる清滝も悪くはありません。
なんだかものを考えるには良い時間のようにも思えます。

じっくり作品と向き合っています。

甲谷・由良部展、準備進めています

5月13日〜21日までの甲谷匡賛展「一畳百色」
〜由良部正美のパフォーマンスとともに〜

搬入飾り付けを行いました。
会場1階の真ん中には一畳の畳が置かれ、そのまわりを甲谷さんの絵画作品がぐるりと取り囲む形です。

この一畳は、甲谷さんの生活空間の象徴でもあり、今回、由良部さんの舞台空間にもなります。

2階にも作品の展示のほか、これまでの甲谷さんと由良部さんスペースALS-Dの活動の記録、そして、甲谷さんの写真が展示されています。

奥の小部屋では、プロジェクターで作品を見ることもできます。
さらに、絵を描いた当時に、甲谷さんが日々つけてネット公開していた「甲谷匡賛の甲開日記」を由良部さんが朗読したものも会場で流す予定もありますよ。

16日〜21日には、11時〜15時まで由良部さんの舞踏が行われますが(由良部さん、一畳の畳から出ないことを自分に課して、ロングパフォーマンスを行う予定)、その際、舞踏の背景には、この朗読と、現在の甲谷さんの生活の音(ヘルパーさんや来訪者、お医者様の声、水音、部屋に流れる音楽など)が入り混じるように流れる予定です。

舞踏の後には、由良部さんと会場の皆さんとの質疑応答の時間も予定しています。

5月10日には京都新聞に展覧会とお二人に関する記事が掲載されました。
どんな展覧会になりますか、多くの方と会場でお会いできれば嬉しいです。
甲谷さんが来られる日もあるはずです。

展示 5月13日(土)〜5月21日(日) 11:00~17:00
舞踏 5月16日(火) 17日(水)19日(金) 20日(土) 21日(日) 11:00~15:00
*上記15:30〜 由良部さんが語る「甲谷さんのこと」質疑応答を中心に
会場 清滝ギャラリーテラ
入場 全日500円 (会場にてお茶をどうぞ)
*一度入場料をいただいた後は、当日の会場への出入りは自由です。
新緑の清滝の自然と会場の作品、ともにお楽しみください。

やってみてわかること

今日は晴天の清滝で掃除に励む。

掃除機をかけてから床の拭き掃除。舞踏では畳一畳を使うので、畳を一枚上げて、風を通し、日光に当てて天日干し。
午後には由良部さんも来られて、打ち合わせ。

会期中には、甲谷さん始め、車椅子の方が複数来られるかもしれないので、由良部さんに車椅子の動線を見てもらう。バリアフリーとは言い難い古民家の清滝テラだけれど、たくさんの車椅子の観客が集う会場なんて、すごく楽しみだなあ!


「ALS曼荼羅」甲谷匡賛作品より

でも、いざそれを実現しようと思うと、いろいろ細かいことが気になってくる。フローリングの床には車椅子ごと上がってもらえばいいとしても、土間とフローリングの段差は上がれるのか?スロープを作っては?いや、スロープを作るには後ろに引きの長さが必要だが、テラには引きのスペースが足りない。
由良部さん、会場の寸法を細かく測っていかれる。一気に車椅子を上げるのではなく、もう一段段差を作って、二段階で車椅子をそこに上げたほうがよいと提案してくださる。

絵を飾るにしても、大人が立って鑑賞するのと、車椅子で鑑賞するのでは高さも異なるだろう。出入りのこと、トイレのこと、一つ一つ考えておかねば困ることばかりだ。
だからと言って、それはできないというのではなく、ではどうしたらいいかと考えることが、大事なことなのだろう。


「お前の目は節穴か」甲谷匡賛作品より

 

恥ずかしながら、実際にやろうと思って初めて、問題点がなんなのか、どこに問題があるのか、次第にわかってくる気がする。
障害のある方に手を貸したいと思っていても、どうしたらいいのかわからないまま、何もできないでいることって多いのだと思う。私もそう。でも、経験して、こうすればいいのかと知れば、次にはもう少し余裕を持って何かできるというものだ。
そういう意味でも、やってみるって大事なことだ。そういう経験をたくさんするって大切なことだ。


「桃色の中の孤独」甲谷匡賛作品より

車椅子の方が来られて、自分はもちろん、会場に居合わせた見ず知らずの人にも手を貸していただき、みなさんとともにこの展覧会を共有できたら、たいへん嬉しいことだと思っています。みなさん、どうぞよろしくご協力お願いします!


清滝は晴天。新緑むくむく成長中。