少し前になりますが、以前から存じ上げているジュエリー作家の井澤葉子さんが、フィリピンからのお客様を連れて西陣テラに来られました。お客様のビンさんはフィリピンでも良質のアバカ繊維を産出し伝統的な編み物をつくる村のご出身で指導的な立場にある方、村ではとっても美しい光沢のある編み物が作られています。井澤さんは村の伝統工芸の手仕事を日本の需要につなげるお手伝いをされています。
以前より、村にも行かれた井澤さんからお話を聞き、その繊維の魅力にも惹かれていましたので、会った早々3人で繊維話で盛り上がり。アバカとバンブーの繊維の話、紙づくりの話など、互いに興味津々質問が飛び交い、たくさん聞かせてもらい話しました。
こういうとき、ものづくりには、国や言葉の壁や隔てがなく、すっと中に入って話がはずんでいけるのが楽しいところ。その後ご一緒に西陣の工房での組紐作りにもチャレンジして、手仕事の魅力と隔てのなさを楽しんだ1日でした。
村にはたくさんバンブーやアバカが生育しているようなので、いつか行って、ご一緒に繊維を取り出し、編み物や紙づくりをしてみたいなあ。
このところ、「ゴザ編み」「竹細工」「拭き漆」など、ものづくりにチャレンジする機会に恵まれ、その面白さを再認識しています。元来手は不器用でして、細かい精密な仕事は苦手なのですが、一から十までものを作っていくことにはとても魅力を感じます。自然の素材から衣食住の術を見つけてきた古の人のDNAが蘇るのでしょうか?「これ、こうやって作られているんだ」「作ろうと思えばできるものなんだ」と知ることも新鮮な驚きです。
そして、ものを手でつくる時、大方の場合によくある作業、「繰り返し」を続けるという作業にも、実はしばしば密かな心地良さを覚えます。「縦糸と横糸を交差させる」とか「繊維を水にくぐらせ紙をすく」とか「木に漆を塗っては拭いてゆく」とか、そうした単純な繰り返し作業は、ごちゃごちゃしょうもないことを考えがちな頭を空洞にして、無心になれるひと時で、私、嫌いではありません。
これからも、下手なりにも、暮らしに使える様々なものをつくっていってみたいと思っています。みなさんともそうした作業をご一緒もしたいし、逆にものづくりのプロにも、更に尊敬の念を持っていきたいと思っています。