舞踏始まりました

由良部正美さんの舞踏が始まりました。

5月16日。私、固唾を飲んで見守ります。
11時、畳の上に大の字で横たわる由良部さん。
気づかぬうちにいつの間にか、起き上がっています。
音もなく、ゆるやかに動き出し、風のようにうねり、またいつの間にか横たわっています。
見ていたはずなのに、いつの間にかそれが始まり、終わっているのです。

15分がとても長く思えます。

会場には、甲谷さんの日記を由良部さんが朗読した録音や、現在の甲谷さんの生活音も流れ、外では川の音や車の音もします。でも「静謐」という言葉がふさわしいように、すごく静かです。

なんだか体はそこに横たわっているけれど、魂だけがそこを抜け出て、起き上がり、動いているように思えます。

5月17日。輝くようなお天気の朝。
今日も畳一畳の上で大の字から始まります。
朗読は2005年2月から。

甲谷さんが会場の絵を描き、日記をつけていたのは2005年。
それを読んでいる由良部さんの声は2023年、その背景に混じり込んでいる音も、2023年の甲谷さんの生活の音です。
2005年と2023年が入り混じり、そこに、2023年5月17日の清滝の川の音や人や車の音がさらに加わり、不思議な時間と空間の多重構造になっています。

時間と空間は独特の歪みを見せ、ある時は時が止まったかと思えば、ある時は突然進んでしまうような気がします。

明日18日は展示のみ。5月19日、20日、21日には、展示と舞踏の両方がご覧いただけます。
静かにじっくりと展示と舞踏をご覧いただくなら、早めの時間帯がおすすめ、舞踏とその後のギャラリートークも参加される場合は、午後にどうぞ。
展示は11時〜17時、舞踏は11時〜15時、ギャラリートークは15時20分ごろからの予定です。