テラ20周年を迎えて

2019年も立春を過ぎ、旧暦でも新年を迎えました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今年、テラは竹紙の店とギャラリーをはじめて20周年を迎えました。1998年夏に寺町通りで呼び止められるように一軒の古い京町家に出会いました。この家を残したいなあと願い、大家さんを探して借受け、傷んだ家に息を吹き込むように修繕し、会社を立ち上げ、竹紙の店とギャラリーを始めたのが1999年1月でした。その前よりご縁をいただいていた故・水上勉先生にご相談したところ、エールを送っていただくとともに、「竹紙は自分でも漉かなくてはだめです」と言われ、修繕中の店の間の壁紙は竹紙にしようと決心。若狭に通って竹紙を材料から作り、手漉きして自分たちで壁に貼りました。家と出会ってから半年足らず、まったく怒涛のような日々でした。

店を始めてからも、自転車全力疾走のように走り続け、多くの方々に出会いました。そして2009年に10周年をやり終えたとき、ふと「この家にしてあげられることをやり終えたなあ」という気持ちが湧いてきて、一度西陣の自宅に戻ろうと思ったのです。あんまり突っ走ってきたではないか。もう少し自然と暮らしに近くありたいと。

そう思い始めていた11月半ば、たまたま清滝に散策に出かけました。その年の紅葉は素晴らしく美しく、真紅に染まった川沿いの道を犬を連れて歩いていると、またまた一軒の家に呼び止められました。「あれ?こんなところに家が?」

12月末にはその古民家を購入することになり、また傷んだ家を修繕することになりました。柱を根接ぎし、漆喰や土壁を復活させ、湿気の強い家に風を通すことを心がけましたが、同時にどうしてもやりたいと思い始めたことがひとつありました。それは、火伏せの神・愛宕山のお膝元であるこの家に、おくどさんを復活させることでした。

これは夫が中心になって手作りで行いました。あちこちの古いかまどを調べたり、左官屋さんの教えを受けたりしつつ、試行錯誤で作り上げましたが、出来上がったおくどさんは予想以上に使い勝手が良く、ご飯もおかずもすこぶる美味しいのです。共に設置した薪ストーブと合わせて、料理に暖房に大活躍。新しいギャラリー、清滝テラの象徴的存在となりました。

自宅である西陣テラを竹紙の店に、清滝テラをギャラリーにと拠点を移してからは、人と自然と暮らしの調和を求めて活動を続けています。

 

おかげさまで、こうしてテラは20歳になりました。ようやく成人になったとも言えるのでしょうか?  多くの人に出会い、多くの人に支えられてここまで来ましたことを、皆様に深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

今年は、来し方を振り返りつつ、さらに行きし方を見つめつつ、一年を過ごしていきたいと思っています。水上先生にやりますとお約束した「世界の竹紙」についてのご報告もしていきたいと思っています。自分も昔ほど若くはないのだし、家族の状況も変化してきています。でも、ここにきて、また少しやりたい目標も湧いてきました。落ち着いて、心の火は絶やさず、しっかり自分も周りも見つめながら、ゆっくり前を向いて進んでいきたいと思います。

今後ともどうぞよろしくご指導ください。そして見守ってくださいますようお願い申し上げます。                     (テラ 小林亜里)